ライ・クーダー&ヴィシュワ・モハン・バット『ア・ミーティング・バイ・ザ・リヴァー』

ア・ミーティング・バイ・ザ・リヴァー

ア・ミーティング・バイ・ザ・リヴァー

93年作。ライ・クーダー北インド出身のスティール・ギター奏者と共演したアルバムです。
正確には、ヴィシュワ・モハン・バットが奏でている楽器はスティール・ギターはなく、<モハン・ヴィーナー>といいます。これはバットがスライド・ギターを独自にアレンジしたもので、スライド・ギターに北インドの民族楽器ヴィシトラ・ヴィーナーからヒントを得たアイディアを加えて開発したそうです。ライもバットもスライドが得意で、バットの楽器が純正な民族楽器ではないことから、両者の親和性がとても高いものになっているのがこのアルバムの心地よさの要因でしょう。ここで聴かれるのは異文化の対決ではなく、交流であり親密な会話です。つまりはライが『チキン・スキン・ミュージック』や『ジャズ』、『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』などで展開してきたものと同質な楽しさの音楽が鳴っているのです。
表題曲「ア・ミーティング・バイ・ザ・リヴァー」ではごく控えめだったライが、「ロンキング」「ガンジス・デルタ・ブルース」と徐々に持ち味を発揮していく様が面白く、まるでガンジス川をゆったりと川下りしているかのよう。2人の音楽的川下りは海に近づくにつれて様々な要素が流れ込み、最後は世界の音楽がひとつとなった大洋にたどり着きます。アルバムをしめくくる曲がハワイアンの「イサ・レイ」というのはまさにそのことを象徴しているといえるでしょう。