NHK杯第1回戦:石田九段vs北浜七段

名人戦棋聖戦のような息詰まる熱戦、盤上真理の追究といった厳しさと均衡の美しさも将棋の魅力ですが、わいわいと「ここはこの方が良かったんじゃない?」「ここでこう指しておけばよかったか〜」と盤を囲んで和やかにおしゃべりするのも将棋ならではの楽しさですよね。今日のNHK戦はそんな将棋の楽しさを思い出させてくれた一局でした。久しぶりの本選出場となった石田九段はかつて名解説者としてもならした人。そして解説が加藤一二三九段!役者が揃ったとはまさにこのこと。対局中の加藤九段はいつもの“ひふみん節”。休むことなく自分の読み筋を早口で披露していきます。中盤の手の広い局面でも様子見をしないで、頭に手をやりながら読みにふける姿を見ていると、この人は心から将棋が好きでたまらないのだなあと感心して、幸せな気持ちになってきます。
勝負の方は北浜七段の快勝。しかしある意味本番はここから始まる感想戦(笑)。「角得なのに、なんで良くならなかったんだ〜」としきりにボヤク石田九段に加藤九段のマシンガントークが加わり、勝ったはずの北浜七段の影がすっかり薄くなってしまいました(北浜七段はもともと穏やかな方だけに・・・)(^^;)。検討の中で加藤九段が、馬を切って銀を打つ筋を披露すると「そうか、銀打ちか〜」とさらにボヤク石田九段。ボヤキといっても湿っぽくなくて巧まざるユーモアがあるから見ていてイヤな気持ちにならないんですね。北浜七段は「そうですね。それなら大変でしたね」とあくまで控えめな態度。それがまた、エネルギッシュな加藤・石田と絶妙のコントラストをなしていて良かったです。こんなに(良い意味で)笑えた感想戦は初めてでしたよ。将棋の魅力の幅広さを再認識できました。