第79期棋聖戦第1局:佐藤棋聖vs羽生二冠

私はいつも、一局の「無限の広がり」を書き尽くした本の存在を夢想する。一局の対局を通して、2人の対局者が脳の中で考えたすべてを書きおろしたら、どんなものになるのだろう。
 「百冊くらいの、百科事典みたいに分厚いものになるでしょうか」

 私は佐藤棋聖に問うたことがあるのだが、

 「そうでしょうね。そのくらいにはなるのでしょうね」

 いとも簡単に佐藤棋聖は答えた。

―【棋聖戦梅田望夫氏観戦記】(4)「孤高の脳」が生む無限の広がり より引用

棋王戦に続く両雄激突。7連覇がかかっている佐藤棋聖が難解な戦いを制し、まずは1勝です。後手番で勝利したというのが大きいですね。
さて、この第1局はこれまでにないユニークな試みがなされました。梅田望夫によるネット観戦記がリアルタイムで更新されたのです。「忙しい日常を暮らしながらも、将棋への興味・関心を、ひそやかにずっと持ち続けている無数の将棋ファン」の視点で書かれた文章は細かい手の分析ではなく、羽生、佐藤両対局者の人間的魅力や場の空気、将棋の持つ均衡の美を伝えることに重きをなしたもので、量もたっぷりあって読ませます。将棋ファン以外の人が読んでも刺激を得られると思いますよ。冒頭に引用した箇所なんて、まるでボルヘスみたいじゃありませんか!

http://sankei.jp.msn.com/culture/shogi/080611/shg0806111032001-n1.htm
http://sankei.jp.msn.com/culture/shogi/080611/shg0806111345002-n1.htm
http://sankei.jp.msn.com/culture/shogi/080611/shg0806111524003-n1.htm
http://sankei.jp.msn.com/culture/shogi/080611/shg0806111638004-n1.htm
http://sankei.jp.msn.com/culture/shogi/080611/shg0806112232007-n1.htm