オフ・コース『SONG IS LOVE』

SONG IS LOVE(紙ジャケット仕様)

SONG IS LOVE(紙ジャケット仕様)

いつもお世話になっているショック太郎さんとamed-recさんのブログが最近になってあいついでオフコースのアルバムを取り上げていました。自分でもなんとなく彼らを聴きなおそうかと思っていた矢先のことだったので、不思議なシンクロニシティを感じましたよ。
私がオフコースを聴き始めたのはご多聞にもれず「さよなら」以降のことで、『We are』、『Over』、『I Love You』といったアルバムを当時は愛聴していました。これらはもちろん完成度の高い優れた作品なのですが、今の私にとって面白く感じるのは、アコースティック・デュオから5人組のバンドへとゆるやかに移り変わる過渡期に生み出された一連のアルバムです。
『SONG IS LOVE』はその最初の一枚で、初期の名作『ワインの匂い』に続いて1976年に発表された4枚目のオリジナル・アルバムです。この年彼らは自らのオフィスであるオフコース・カンパニーを設立。また、小田和正早稲田大学院を卒業し、プロのミュージシャンを本格的に歩みだします。後にバンドに加入する大間ジローと松尾一彦もこのアルバムから参加するなど、グループは大きな転機を迎えていましたが、アルバムの内容もそれを象徴するような様々な試行錯誤の跡がうかがえる作品となっています。これは決して中途半端なアルバムであることを意味してはいません。完成度では後年のアルバムに一歩譲るかもしれませんが、楽曲は粒揃いで、例えるならビートルズの『ラバー・ソウル』を思わせるものになっているのです。
収録曲で有名なのは軽やかな小田和正曲「こころは気紛れ」でしょうか。けれどもこのアルバムで興味深いのは鈴木康博の曲の方で、ドゥ・ワップやビーチ・ボーイズっぽいコーラスを配した「ランナウェイ」(もっとコーラスを前面に出した方が面白かったのではと思うのですが、控えめに響かせるのが彼ららしいのかもしれませんね)や、はちみつぱいのアルバムに紛れ込んでいそうな「ひとりよがり」。イントロから歌いだしまでの部分が、はっぴいえんど「風をあつめて」を連想させずにはいられない「おもい違い」など、今改めて聴いたからこその発見があって面白く聴くことができました。このアルバムを皮切りとする70年代後半のオフコースのアルバムには、彼らの音楽的な懐の深さを再認識させる楽曲がたくさん収録されています。もしかしたら、今こそこの時代の彼らが再評価されるのにふさわしい時期なのかもしれません。アルバムの最後でさりげなく流れるシークレット・トラック的な小品を次作『JUNKTION』ではアルバム冒頭のイントロとして使うなんて、まるでピチカート・ファイヴじゃありませんか。

<参考>

1)ショック太郎さんが取り上げたのは“一番「キリンジ度数」が高いアルバム”『Fairway』

http://d.hatena.ne.jp/bluemarble/20080513

2)amed-recさんはTV放映された特別番組「Next」(当時私もリアルタイムで観ました)のサントラ盤に即して自分とオフコースの出会いを熱く語っております。
http://d.hatena.ne.jp/amed-rec/20080528