5/30アンサンブル・フランセ“瀬尾和紀とパリの若き巨匠たち”@HAKUJU HALL

畏友chimeさんの強いお勧めで行ってきました。室内楽のコンサートに行くのは随分久しぶりだったと思います。Ryoseiさんと一緒でした。
アンサンブル・フランセはフルート奏者・瀬尾和紀がパリの音楽仲間と結成したユニットです。瀬尾以外のメンバーはニコラ・バルデイルー(クラリネット)、ニコラ・ドートリクール(ヴァイオリン)、ベルトラン・レイノー(チェロ)*1、ローラン・ワグシャル(ピアノ)というもの。いずれも新進気鋭の演奏家達です。


フランス。室内楽。そしてチラシには“パリのエスプリ”といういかにもなコピーが踊る。そうすると洒脱で小粋な演奏スタイルをもったユニットなのではないか、と思ってしまいますよね。しかし一曲目のドビュッシー「牧神の午後への前奏曲」でそんなありきたりなイメージは心地良く打ち砕かれることとなりました。柔らかい音色のローランのピアノにこそ原曲の浮遊感やおぼろげな色彩感が残っていますが、それを背景に弦と管の音色がくっきりと伝わり、これまでに聴いたことのないドビュッシーが響いてきたのです。強弱のダイナミクスがはっきりとした鮮烈な演奏で早くも強い印象を残しました。
続いてピアノとクラリネットによるドビュッシー「第一狂詩曲」。とにかくバルデイルーの歌心溢れるクラリネットが見事のひと言。奔放かつ力強い名演だったと思います。
前半最後のプログラムはラヴェルの「ピアノ三重奏曲」。これまでディスクだけで聴いていた印象ではラヴェルにしては地味な曲だよな〜というものでしたが、いやいやどうして。彼らの演奏ではラヴェルの持つエキゾチズムが全面に出て「これってこんなにいい曲だったっけ」と目から耳から鱗が落ちまくり(笑)。光り輝く音の粒子が会場を覆っていくのが目に見えるようでした。


休憩を挟んで後半へ。再びメンバー全員が揃ってシェーンベルク「室内交響曲第1番(ヴェーベルン編曲)」。これがまた迫力満点。予備知識なしで目隠しで聴いたら、強烈な音の応酬にまるでコレクティヴ・インプロヴィゼーションでもやってるのではないかと思ってしまいそうなスリリングな演奏でした。メンバーそれぞれが個性を主張しながらも全体としては高度なアンサンブルとして成立していて、この日一番の熱演だったと思いましたよ。
最後はガーシュインラプソディ・イン・ブルー」不思議なことにジャズの影響が濃いこの曲よりシェーンベルクの方が“ジャズ”を感じさせる演奏だったのが音楽の面白いところ。このガーシュインでようやくチラシにあった“パリのエスプリ”を感じさせる演奏が出てきました。ここまで終始裏方に徹していた感のあるローランのピアノもクローズ・アップされ、のびやかな演奏を堪能しました。


アンコールで再びガーシュインの後半部分を演奏して終了。若さあふれる・・・という形容も月並みですが、若い演奏家達の瑞々しいエネルギーがまっすぐに伝わってくる、まさに“エラン・ヴィタール”という言葉がぴったりの素晴らしい演奏会でした。

<曲目リスト>

ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲
  同   :第一狂詩曲
ラヴェルピアノ三重奏曲

〜intermission〜 

シェーンベルクヴェーベルン編):室内交響曲 第1番 作品9
ガーシュウィンラプソディ・イン・ブルー

*1:本来のメンバーであるフランソワ・サルクが体調不良のため代役として参加