ブルース・コバーン『塩と太陽と時』

塩と太陽と時(紙ジャケット仕様)

塩と太陽と時(紙ジャケット仕様)

今なお精力的に活動を続けているカナダのシンガー・ソングライターの5th。雪景色のジャケットが印象的な2nd「雪の世界」と対をなすようなタイトルです。どことなくボサノヴァのアルバムを思わせるようでもありますが、ボサノヴァ自然賛歌はここにはありません。指の間を通して眺める海の光景がそのまま孤独な心象風景に転化しているかのような、翳りを帯びたギターと歌声がこのアルバムの魅力です。ジャンゴ・ラインハルトに夢中になった時期のアルバムだと本人はコメントを残していますが、どこか古いジャズを思わせるノスタルジックな響きが時折感じられるのはそのせいでしょうか。そのノスタルジアもここではコバーンの孤独さを際立たせているように思えます。