第57回NHK杯テレビ将棋トーナメント決勝戦

今日のNHK杯決勝は初の試みとなる生放送でした。決勝の組み合わせは佐藤康光二冠と鈴木大介八段です。連覇を狙う佐藤二冠、今期はなかなか調子が上向かず、順位戦でも辛うじて最終日に残留を決めるなど苦しい戦いでしたが、ここは勝って現在カド番に追い込まれてる羽生二冠との棋王戦への弾みとしたいところ。一方、鈴木八段は順位戦A級復帰を早々に決めるなど今期は好調です。漫画「ハチワンダイバー」の将棋監修も務めている鈴木八段、過去の対戦成績をみると佐藤二冠とは相性が悪いようですが、果たして全国の「ハチワンダイバー」ファンの期待に応えることができるか(笑)、注目の一戦となりました。解説は決勝の大舞台にふさわしく、森内名人の登場で個人的には盛り上がりましたよ。


振り駒の結果佐藤二冠が先手。鈴木八段が5筋の歩を突いたのでゴキゲン中飛車で戦うかと思いきや、いきなり角交換を敢行。佐藤二冠のお株を奪う“手損角換わりダイレクト向かい飛車”を採用してきました。こういう難しい形になったら私レベルでは解説が頼りです(笑)。その点、森内名人はあまりしゃべる方ではないのですが、さすがポイントを押えた解説でした。その名人、そろそろ中盤かというところで佐藤二冠の手番になったとき「ちょっとヘンな手を思いついたのですが・・・」と端角から攻める筋を指摘。すると果たして佐藤二冠がその手を指してきたではありませんか。さすが奨励会時代からのライバルだと感心しちゃいました。


素人目にはその端角から佐藤二冠が優勢になったように見えました。受けが得意な鈴木八段も守ってばかりじゃいられないと逆襲に転じましたが、これも私にはしかたなくムリヤリ攻めているようにしか思えませんでした(感想戦では鈴木八段は「充分やれると思っていた」と語っていたので、やはり素人の形勢判断はアテにならないなあと思いましたが(笑))。ところがさすが好調の鈴木八段。その攻めがなかなかの迫力で、攻防に角を利かせたりして佐藤陣にくらいつきます。しかし佐藤二冠は冷静に(先日の順位戦終戦のときのような苦悶の表情はなく、終始落ち着いた表情に見えました)自陣を固めて攻めをはねのけ、最後は桂打ちからあざやかな即詰みにうちとり、見事連覇を達成しました。


おそらく千日手持将棋が発生したときに備えていたのでしょう、放送時間は10:20から14:00までと長めに設定してあった今日の放送、大きなトラブルもなく12:30頃に終局となりました。残った時間は感想戦とこの一年のトーナメントを映像で振り返ることに費やされましたが、こちらも見ていて面白かったです。本戦初登場で羽生二冠を破りベスト4に残った、今大会の台風の目、長沼七段が大きく取り上げられていましたね。準決勝こそ佐藤二冠の前に完敗でしたが、それまでの粘りに粘る指し回しで次々と対戦相手を打ち破ってきた姿は素晴らしかったです。また、逆転劇をとりあげたコーナーでは、ネットで話題を呼び普段あまり将棋に関心をもたない人をも引きつけた、羽生二冠と中川七段の一局も当然登場。解説だった加藤一二三九段の「あれ、あれ、あれれ?」や「ウヒャー」は何度聞いても面白いですね。


番組最後の表彰式では来期のトーナメント表が発表されました。注目はなんといっても、61年振りに行われたプロ編入試験に合格して、一旦は道を絶たれたプロ棋士になることができた瀬川晶司四段の初登場でしょう。ここのところ勝ちが続いて波に乗っているようなので、その勢いを持続してがんばって欲しいです。