三宅榛名+高橋悠治『いちめんの菜の花』

いちめん菜の花

いちめん菜の花

作曲家であり、ピアニストでもある2人のデュオ。さぞかし高度な技巧で丁々発止のやり取りが繰り広げられていたり、壮絶な即興演奏が展開されているのだろう・・・なんて思うと肩透かしを食らうことになります。ここで弾かれている楽曲は、2人の作品の他に「三文オペラ」の曲(高橋のヴォーカルが聴ける貴重(?)な演奏)や、坂本龍一グラスホッパーズ」などの小品で、ぱっと聴いて耳に馴染みやすい曲ばかり。使用楽器もピアノに止まらず、おもちゃの笛なども使われています。では何も考えず適当につくられたアルバムなのか、ともいえないところがユニークで、とかくムズカシク考えがちな人には「まあもっと自由に音楽を楽しみましょうよ」と語っているようでもあるし、ただ聴いてたのしければいいでしょ、と思っている人に対しては「もっと色々考えて聴くと音楽はもっと面白いんだよ」と訴えているようでもあります。まさに三宅がライナーノートで書いている「とりとめなくナツカしく、あてどなくキッパリと、たわいなく、しかしながら善意と悪意が入りみだれるというようなことが、このレコードの展望なのだろう」という言葉がぴったりなのです。カッコ付の「現代音楽」や「ポピュラー音楽」のしがらみからあくまで無縁でいようとする、自由で無責任な音楽をこのアルバムは目指しているのではないでしょうか。