青柳拓次『たであい』

たであい

たであい

リトル・クリーチャーズやダブル・フェイマス等で活躍する才人の初ソロ。基本的にシンプルなギターの弾き語りなのですが、色づけとして笙や二胡、〆太鼓、トンコリといったアジアの楽器が加わっているのが大きな特徴です。しかしこの作品には“アジア色”は希薄。ギターの爪弾きと素朴なヴォーカルによるパーソナルな歌の世界にこれらの楽器はごく自然に溶け込んでいるのです。かつてフォークトロニカを聴いたときに、それらの音楽が電子音やグリッチ・ノイズをパーソナルな感触で響かせていることに軽い衝撃を受けたものですが(これを「あまりに音楽的すぎる」と斬ってすてるのは乱暴すぎる物言いでしょう。ステロタイプな“非・音楽”よりずっと素晴らしいと思います)、このアルバムにもその時と似た衝撃を受けました。穏やかな顔をした野心作。