“アルゼンチン
音響派”を代表するキーボード奏者の10年振りとなるソロ・アルバム。ピアノを基調とした静謐な世界が拡がるアルバムですが、
アンビエントと呼ぶには
プライヴェートな感触が濃く、デモ・テープ的と形容するには緻密に音響を計算してつくられたように聞こえる、不思議な立ち位置にある作品です。
ビル・エヴァンスや
武満徹を思わせる美しいピアノの響きに
メトロノームのような
機械的に時を刻む音や、水滴、街のざわめきなどの現実音が溶け込んだり、時折
民族音楽的なビートがふっと浮かんでくる瞬間もある。それはまるで部屋でピアノに向っている音
楽家の姿をとらえたドキュメントのようです。無心にピアノを響かせてるうちに、現実音と音
楽家の頭で鳴っている音が渾然一体となって部屋を徐々に満たしていく。やがて次第に聴いている方も今鳴っている音が夢かうつつか判然としなくなってくる・・・。これぞ正にイマジナリー・
サウンド・トリップ。