anonymass『anonymoss』

anonymoss

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Sketch ShowHuman Audio Spongeとの共演歴のあるユーフォニウム奏者、権藤知彦が参加しているグループ、anonymassがYMOのカヴァー・アルバムを発表しました。anonymassのアルバムは数枚聴いたことがありますが、『TNT』の頃のトータスを体温低くしたかのような、丹念につくられているけれど、どこか淡々としてつかみどころがないところにもどかしさを感じるときもありました。今回のアルバムでも体温低めなところは変わっていないのですが、オリジナル曲の個性が強いおかげで平坦な雰囲気になるのが回避されて、彼らのアルバムの中で最も気に入った作品となりました。セニョール・ココナッツのYMOカヴァーとは対極に位置するユニークな一枚です。
選曲は初期から後期に至るまでの中からバランス良く選ばれていますが、「君に胸キュン」や「Cue」といった代表曲だけではなく、「Mass」「Happy end」「Wild Ambitions」といったかなり渋い曲も取り上げられているのが面白いところ。元々がヴォーカル、ユーフォニウム、キーボード、チェロという変わった編成のグループですが、曲によりサックス、アイリッシュ・ハープ、スティール・パン、果ては琴やタップダンスまでも加えて、テクノ・ポップからは遠く離れた独特のチェンバー・ミュージックに仕立て上げています。原曲の荘厳な雰囲気をトイ・ポップ的な要素も感じさせる、どこかほのぼのとした穏やかな音楽に換骨奪胎してしまった「Epilogue」の解釈は彼らにしかできないものではないでしょうか。