テオ・マセロ『Teo』

TEO

TEO

マイルス・デイヴィスのプロデューサーとして知られるテオ・マセロが亡くなったそうです。ギル・エヴァンスとならんでマイルスの音楽を影で支え続けてきた人物で、とりわけ『イン・ア・サイレント・ウェイ』以降は大胆なテープ編集を導入して、マイルスの革新性を際立たせることに成功しました。『ビッチェズ・ブリュー』も『オン・ザ・コーナー』もテオの編集手腕がなかったら果たしてここまでの評価を得られていたでしょうか。即興性が大きなファクターを占めるジャズという音楽に「編集」という概念を持ち込んだ功績は大きいと思います。若い頃にエドガー・ヴァレーズを学んだという経験が、音を“素材”として扱う視点を与えてくれたのかもしれません。

このアルバムはテオが50年代に残した音源をまとめたアルバムで、私が持っているCD版は2002年にキップ・ハンラハンが自分の主宰するレーベル、アメリカン・クラーヴェから再発したものです。数々のセッションから構成されたアルバムだけあって編成や曲調は多彩。抑制された響きのストリングスにリー・コニッツのサックスが絡む曲や、アコーディオンを上手く使った曲など、どの曲にもなにかひとつ独自の工夫が施されているのがさすがです。かなり当時としては先鋭的なアレンジの曲もありますが、全体を貫くクールな質感にどこかマイルスに通じる美意識が感じられるように思います。