ザ・バンド『ロック・オブ・エイジズ』

Rock of Ages

Rock of Ages

セレクト合戦の音楽仲間の間でにわかにザ・バンド熱が高まっています。それぞれが自分の“ザ・バン道”を語っておられて、楽しく拝読させていただいています。リアル・タイムで接していた方もいてうらやましい限り。とはいえ、私が彼らの魅力に気がついたのはかなり遅くて大学に入ってからだったような記憶があります。独特のもっさりした感じに慣れるまでかなり時間がかかりました。なにせそれまで夢中になって聴いていたロックがテクノ・ポップ、ニュー・ウェーヴ、プログレでしたからねえ(笑)。ザ・ビートニクスが2ndアルバム『ビートで行こう!』の中で「ステージ・フライト」をカヴァーしていなかったら、彼らを好きになるまでもう数年は要していたのではないかと思います。そんなわけで、今でもザ・バンドで一番好きな曲といえば「ステージ・フライト」。もちろんこのアルバムでも取り上げられていて、リック・ダンコの熱いヴォーカルが聴けます。これに続いてこれも名曲「オールド・ディキシー・タウン」のイントロがホーンで奏でられる瞬間は、このアルバムの数あるハイライトのひとつといえるでしょう。


話が先に進みすぎたので少し戻って、このライヴ・アルバムはザ・バンド初期の活動を締めくくる集大成的な位置にあるといえるでしょう。4thアルバム『カフーツ』発表後の1971年、ニューヨークのアカデミー・オブ・ミュージックで行われた年越しライヴを収録したものです。『カフーツ』冒頭を飾った「ライフ・イズ・ア・カーニバル」で起用したアラン・トゥーサンによるホーン・アレンジを大々的に導入したのが特徴。重心が低いザ・バンドの演奏とニュー・オリンズ・スタイルのトゥーサンのホーン・アレンジは相性が良く、彼らが追及してきた音世界に厚みを加えることに成功しています。選曲も代表曲を網羅して申し分なし。演奏面ではガース・ハドソンの活躍が目立つように思えます。中でも年が変わる寸前に奏でられた、7分を越える長大なロング・オルガン・ソロ「ザ・ジェネティック・メソッド」が強烈。賛美歌とバッハとフリー・ジャズが渾然一体となったようなアヴァンギャルドで奔放な演奏で、ザ・バンドの音楽が他のルーツ追求タイプのグループとは一線を画しているのは彼の音楽性によるものが大きいのでは?とも思えるくらいです。もちろん他のメンバーの演奏も力の入った、聴き応えのあるものであることは云うまでもありません。

私が今持っているCDは2枚組で、2枚目はボブ・ディランとの共演も含む全曲ボーナス・トラックという贅沢なものです。けれどもDisk1だけでも充分に価値があることは間違いありません。個人的には『ラスト・ワルツ』より愛着を覚えるライヴ・アルバムです。