棋音戦てんまつ記(2)〜福部くんの科白がしみるぜ編〜

米澤穂信というミステリ作家がいます。彼のことは今回の棋音戦のフィクサー(?)であるめんちかつさん(id:nota10)の日記で幾度か取り上げられていたのをきっかけに興味を持ち、読み始めました。さて、彼の作品の中に「古典部シリーズ」と言われている連作(といっても一作一作は独立している)があります。その登場人物の一人に、主人公の親友である福部里志という人がいます。多趣味でかつ博学。なによりも自分が楽しむことをモットーとしながらも、決して軽薄ではないという好人物なのですが、彼がときおりもらす科白に「データベースは結論を出せないんだ」 という言葉があります。親友である折木奉太郎が事件の真相をいくつかの手がかりから導き出す能力に秀でていることを目のあたりにして、様々なデータを提供することはできるけれど、そこまでで終わってしまう自分のことをやや自嘲的に(ただし卑近な印象は感じられないのが米澤さんのうまいところです)述べているのですが、将棋の勉強をはじめて、福部くんのこのセリフがやけに身にしみるようになってきたんですね。

将棋には定跡書というものがあって、そこには初心者から有段者に至るまで様々なレベルにあわせた書物がたくさんあります。手の流れを追いながら解説しているもの、「次の一手」形式で問題を解きながら覚えていく形式のものetc。どれも有益なのは間違いないのですが、将棋はまだ可能性が極められていないゲーム。実戦で定跡書通りに最後まで進むということはまずありません。あるところからは一手一手自分で決断し、結論を出していかなくてはなりません。私はそこのところが非常に弱いんですね(・・・と書くと、あたかも定跡をしっかり覚えているように見えるけど実際はそれすらもできていません(笑))。手筋とかをこつこつ学んでも応用がきかない。パソコンと指していても中盤になるとオロオロするばかり。知識はそれなりについてきてもどうすればいいんだと迷い道くねくね。そんなとき「データベースは結論を出せないんだ」という科白が頭の中で鳴り響くのです。ただ知識があるだけで、知恵にまで昇華されてない・・・このままではマズイ、マズイぞ!某巨大掲示板の「実力が上がらず棋書ばかり増えてしまう奴のスレ 」を読んで、オレのことだなんて納得している場合ではないぞ!対決の日は迫ってきています。とにかく居飛車でいくのか、振飛車でいくのかくらい決めないと・・・・いや、いくら作戦勝ちしたって、最後に失敗したらダメだから、とりあえず終盤力をつけないと・・・とりあえず「振るや振らざるや」は後回しにして、「寄せが見える本(基礎編)」の再読を始めた1月末の私なのでした。
(以下次回)