政風会『政風会』

政風会

政風会

今年の鈴木博文は活動的ですね。ソロを4枚出すといっておきながら未だに音沙汰のない兄とは違って(笑)*1mio fouの復活アルバムに続き、カーネーション直枝政広とのデュオ・ユニットである政風会のアルバムをリリースしてきました。
20年ぶりの復活であり、意外なことにフル・アルバムのリリースはこれが初めてとなります。小細工なしの、ややラフな手触りのロック。ハイ・ファイではなく、ややくぐもった音質で空気感を伝えることを重視している録音とあいまって、『LIVING/LOVING』の頃のカーネーションを彷彿とさせる仕上がりになっています。ムーンライダーズ『Moon Over The Rosebud 』やmio fouの新作では少なかった博文の単独曲がたっぷり味わえるのがうれしいところで、博文ならではの抒情や飄々としたユーモアを堪能することができます。もちろん直枝の曲も熱いハートが伝わる佳品揃い。
また、「空とバケツと山百合と」と「雨に濡れながら」での“雨”、「Starsailer」と「Highway Star」の“星”、そして「こんなにきれいな月はみたことがなかった」と「残月」の“月”といった具合に、同じモチーフを用いた曲がペアのように並んでいるのも見逃せないところ。さて、どっちがどの曲を書いたのでしょう?クレジットを見る前に予想してみるのも一興ですよ。どちらも無理に相手にあわせることなく、自分の個性を存分に発揮していますが、本編の最後は交互にヴォーカルを取る「同じ道」というのが心憎い。そしてボーナス・トラックとして収録された1985年の未発表曲「霧笛」が20年以上の時を経ても変わらない2人の音楽に対する姿勢を伝えてくれるのです。ラフにつくられているようでありながら、底に叡智を秘めた懐の深いアルバムといえるでしょう。

*1:現在曽我部恵一プロデュースでレコーディング進行中。でも残り3枚はどうなるのかな(笑)