朝生愛『カモミールのプール』

カモミールのプール

カモミールのプール

今日でこの日記をつけた日が1000日となりました。できるだけ毎日書こうとしていますが、最近ちょっとペースが落ちているので到達するのが遅くなりましたね。で、何か「1000」にちなんだアルバムでも取り上げようと思ったのですが、どうもピンとくるものがなかったので、いつも通り最近よく聴いているアルバムにしました。
朝生愛ゆらゆら帝国の作品にも参加しているシンガー・ソング・ライターで、本作でもゆらゆら帝国坂本慎太郎が参加しています。前作『ラヴェンダー・エディション』は優れた国産アシッド・フォークでしたが、その持ち味は今作にも生きています。漂うようなシンプルなサウンドとやわらかい声のため、BGMとして軽く聞き流すこともできなくはありませんが、きちんとその音楽に向き合うと静かなテンションを孕んでいることに気づかされます。また、ラヴ・ソングは全くという程なくて、世界と自分の微妙な距離感を簡潔に描写している歌詞が目立つのも特徴です。
アルバムの前半、他者の存在は大変稀薄なのですが、

錆びた車輪と鳥の影
シロツメグサと青い空
人のいた気配の中で ただ立っていた
遠くからの声 知っていた ここに人はいない
(アロン) 

中盤では世界から超然と弧絶するのではなく、まさに世界と触れ合おうとする瞬間が描かれます。たとえそれが夢だとしても・・・。

世界が動き出すのが 分かった時に
流れにのるふりをして ひとり飛び込んだ
たとえ溺れたとして 平気さ ここは すべて夢だから
カミツレの大きな水たまり)

そして終曲に至って、「他者」と「世界」と関係を持とうという意志がはっきりと現れるさまには胸をうつものがあります。そしてその決意があくまでも穏やかな表情で歌われるところがこのアルバムの最大の魅力なのです。

そこに世界はないかもしれない
けれど今から君は世界をつくるんだ

(中略)

必要なんだ 君が
聞いていたいんだ 君と
回りたいんだ 君と
君の作る世界を
(ランド)