ピーター・ガブリエル『SO』で彗星のように登場したドラマー、マヌ・カチェですが、その後スティングやロビー・ロバートソン、
ジョニ・ミッチェルなどのアルバムに立て続けに参加し、一躍シーンになくてはならない存在となりました。そんな彼が92年に発表した1stアルバムが本作で、スティングや
ピーター・ガブリエルを始め、ダニエル・ラノワや
ジョン・ポール・ジョーンズなどが参加しています。とはいえ、音の方は派手なものではなく、品の良いシックなポップス。彼自身によるヴォーカルも力んだところのない淡々としたものです。刺激的ではないけれど丁寧に組み立てられた
サウンドで、
シンガー・ソングライターの面をクローズ・アップしているけど、じっくり耳を傾けてみると優れたドラマーならではのリズム・アプローチが隠し味のようになされている・・・・と、こうして書いているうちに気がついたのですが、良くも悪くも90年代の
高橋幸宏の作品とそっくりな感触を持ってますね。この辺り評価が分かれると思います。正直、最初に聴いたときはスティングを水で薄めたみたいだなと思って物足りなく感じたものですが、今では良質のMORが聴きたいなと思ったときに取り出す一枚となっています。