クロノス・カルテット『モンク・スイート』

Monk Suite

Monk Suite

クロノス・カルテットはその活動初期からポピュラー音楽にも意欲的に取り組んできた弦楽四重奏団で、知名度をあげたのもジミヘン「紫のけむり」を取り上げたのがきっかけのひとつです。そういった意味では84年にリリースされたこのアルバムはきわめて彼ららしい作品で、セロニアス・モンクの楽曲に挑んだもの。4曲にゲストとしてロン・カーターを招き、プロデュースはモンクの全盛期だった50年代後半の諸作品を手がけたオリン・キープニュースを迎えるといった気合の入れようによって、単なる現代音楽家の余興では済まされない一枚となっています。エリントン・ナンバーが2曲あるのも、モンクとエリントンのつながりにも目を配った妥当な選曲といえるでしょう(ここではチャック・イスラエル(b)とエディー・マーシャル(ds)が参加)。いくらロン・カーターが参加しているからとはいえ、流石にスイング感には欠けますが、そこまで望むのは野暮というものでしょう。
通して聴いてみると、有名曲「ラウンド・ミッドナイト」の室内楽的な演奏は素直に楽しめましたが、「ミステリオーソ」のような、あのごつごつとした点描的な演奏で弾かれていたメロディーを持った曲を持続音中心の弦楽四重奏で奏でられると、どうしてもある種の違和感を抱かずにはいられませんでした。とはいえ慣れてくるとその違和感が逆に気持ちよくなってくるのが不思議で、全体としてセロニアス・モンクという特異な個性の音楽家の魅力に改めて気づかせてくれるユニークな作品集となっています。翌年発表されたビル・エヴァンス集と聴き比べるのも面白いですよ。