ホルガー・シューカイ『ムーヴィーズ』

ムーヴィーズ(紙ジャケット仕様)

ムーヴィーズ(紙ジャケット仕様)

待望の紙ジャケ化。これはいつ聴いても新鮮に響く音楽ですね。偶然流れてきたラジオ放送や盟友・カンのメンバーの演奏などを巧みに編集してつくりあげた本作は、実験色をあまり感じさせないポップさとユーモア感覚を併せ持っているのが素晴らしい。今回聴きなおしてみて、ギターの多彩な音色の美しさに惹かれました。特に日本でもヒットした「ペルシアン・ラヴ」や大作「ハリウッド・シンフォニー」に顕著に表れていると思います。
リー・ペリーを代表とするダブや、イーノ&トーキング・ヘッズとの共振性も見逃せないところですが、私にとってこの作品はヴァン・ダイク・パークス『ソング・サイクル』〜ゴドリー&クレーム『フリーズ・フレーム』に連なる、サンプリングが一般的になる前にその感覚を先取りしていた、アヴァンギャルドなのにポップでキュートな音楽の系譜に位置づけられているのです。