アン・サリー『こころうた』

こころうた

こころうた

前作はあまりピンとこなかったのですが、これはいいですね。2児の母となった(本人のライナーノートによると第2子の出産を間近に控えながらのレコーディングだったようです)彼女の心境が反映された曲が多いのですが、伸びやかな歌声とシンプルだけどニュアンスに富んだ演奏によって、母性的な感覚はどうも苦手・・・という方でも心地よく聴けるものになっていると思います。特にスティール・パンの使い方が絶妙でアルバムに涼風をもたらしてくれているのです。楽曲に目を向けると、優しさに満ちていて心和むオリジナル曲も粒揃いですが、「椰子の実」から「プレリュード・トゥ・ア・キス」に及ぶカヴァー曲がやはり聴きもので、中でも武満の繊細なポップさをボッサ調アレンジで巧みに引き出した「翼」と、遥か彼方までどこまでも広がっていく青空のような開放感をもたらしてくれるミルトン・ナシメントの名曲「トラヴェシア」が出色の出来となっています。