「
クリムゾン・キングの宮殿―風に語りて」が刊行されたのを機に久々に聴き返しています。
キング・クリムゾンの母体となったトリオが残した唯一の作品で1968年作。今でこそクリムゾン・ファン必携のアルバムとして位置づけられている本作ですが、もし後の
キング・クリムゾンなかりせばブリ
ティッシュ・ロックの風変わりな1枚として細々と聴き継がれていく運命にあったかもしれません。ジャケットに写る3人のなんとも垢抜けない“田舎紳士”っぷり
からして一般受けするとは思えないのですが、音の方もそれを反映した牧歌的なメロディーの曲が並びます。初めて接したときはクリムゾンとのあまりの落差に驚きかつ戸惑ったものですが、ブリ
ティッシュ・フォークを聴きこんだ後に再び耳にしたら、すっかりはまってしまったのでありました。確かにここにはクリムゾンのもつ静と動の劇的な
コントラストや緊張感はありません。しかし“牧歌的”の一言でかたずけるにはドラムがやけに手数が多くてジャ
ジーだし、ギターのフレーズに独特のシャープさがあって、一筋縄ではいかないところが今聴いてもユニーク。アルバム終盤のフリップ作「
組曲第1番」と「エリュダイド・アイズ」でようやくクリムゾンにつながる香りをわずかながら感じ取ることができます。