プリファブ・スプラウト『スティーヴ・マックイーン』

ジャケットを見るだけでなんともいえない甘酸っぱい気持ちになってしまう、思い入れのあるアルバムのデラックス・エディション。2枚組となっていて、1枚目はオリジナル・アルバムのリマスター盤ですが、2枚目はアコースティック・ヴァージョンとして新録された8曲が収録されています。オリジリナル盤の素晴らしさについては今さらいうまでもありません。プロデュースを手がけたトーマス・ドルビーが彼らの持ち味である曲の美しさと瑞々しさを損なうことなくまとめあげていて、今回のリマスターでよりフレッシュな息吹が感じられるようになりました。パディ・マクアルーンとウェンディ・スミスの声が重なる瞬間の輝きはネオ・アコースティックが私たちに残してくれた宝石といっても過言ではないでしょう。
そして20年以上の時を隔てて、パディによって再び歌われたアコースティック・ヴァージョンによる楽曲も負けず劣らず素晴らしい。ウェンディのあの声がないのは寂しいけれど、ブルー・ナイルを手がけたことで知られる名エンジニア、カラム・マルコムがパディの声とアコースティック・ギターの響きを気品ある音としてCDの銀盤に刻み込んでいるのです。こんなに見事なセルフ・カヴァーというのもそうそうないのではないでしょうか?