ザ・シーアンド・ケイク『エヴリバディ』

Everybody

Everybody

シカゴ音響派の代表的なバンドの新作。ジョン・マッケンタイアのエンジニアリング、ブラジル音楽の影響、エレクトロニカ的要素の導入とアルバムを重ねるごとに洗練され、滑らかさを増した音楽を奏でてきた彼らですが、正直前作の「ワン・ベッド・ルーム」はスムーズすぎて物足りなさを感じる瞬間が多々ありました。しかし、本作では上に挙げた要素を脱ぎ捨てて、バンド・サウンドで勝負してきました。そして結果は見事に吉と出ています。バンド・サウンドといっても彼らの特徴である、間を生かした繊細なアンサンブルに変化はないのですが、明らかにエッジが立っているのが感じられ、それが楽曲に適度な緊張感をもたらして最後まで一気に聴かせるのです。クールな佇まいに秘めた熱。サム・プレコップのヴォーカルもこころなしかやや生々しく響きます。それでいて彼ら特有の品位は失われることはありません。この絶妙なバランスが本作最大の魅力です。