小野誠彦『Bar Del Mattatoio(屠殺場酒場)』

bar del

まるで映画を観ているかのような感覚をもたしてくれる名盤。音だけではなく、色や匂い、風が通り過ぎていく感触まで感じさせてくれる稀有な音楽がここにはあります。小野誠彦の名前を初めて知ったのは岡田徹のソロ・アルバムにクレジットされていたことがきっかけです。しかし、エンジニアとしてだけではなく、音楽家としても優れていることはこの94年に発表されたアルバムを聴くまでわかりませんでした。“屠殺場酒場”というタイトルからは想像できない芳醇な響きに満ちていて、特にたゆたうバンドネオンやつややかに鳴る管楽器の響きの美しさは筆舌に尽くしがたいものがあります。懐かしさと新鮮な感覚が入り混じったこの不思議な音世界の輝きはいまだ色あせることを知りません。