門 光子『風の記憶 現代日本のピアノ音楽』

風の記憶

現代音楽を中心に幅広い活動を行っているピアニスト、門 光子。先日新作となる3rdアルバム『ACROSS THE UNIVERSE』をリリースしたばかりですが、彼女のアルバムはどれもしっかりとしたコンセプトを持った作品となっているのが特徴です。選曲はもちろんのこと、どの作品でもファツィオーリのピアノを使用。またジャケット・アートも一貫しており、ひとつひとつのアルバムを丹念に制作していることがうかがえます。

今回取り上げたのはデビュー・アルバムで、サブタイトルにある通り現代日本の作曲家の曲を集めている作品集なのですが、解説によると「日本の作品を演奏する」「ファツィオーリのピアノを使用する」以外のコンセプトとして、1.少ない音による曲 2.日本的ないし東洋的な曲 3.間(ま)が生きている曲 4.テンポの遅い曲 5.響きの美しい曲 に基づいて作られたそうです。果たしてここに聴かれるアルバムは、たゆたうような、しかし深みのある響きをもち、アンビエント的な空間の広がりがある美しい作品となりました。選ばれた楽曲はまず吉松隆の『プレイアデス舞曲集』から5曲。続いて映画「愛のコリーダ」主要テーマを発展させた三木稔「芽生え」、そして武満徹から初期作品「ロマンス」と円熟期の「閉じた眼2」、さらに西村朗「星の鏡」、藤枝守「アップワード・フォーリング」、柴山拓郎「哀歌」となります。それぞれの出来もさることながら、いずれの曲も異なる方法論で作曲された楽曲なのに、共通して流れる響きが感じられ、ひとつの大きな作品を聴いているような思いにさせられる構成の巧みさが光ります。

このアルバムの後の門のアルバムはよりアジア的な響きに目を向けた2nd『東方逍遥』、そして嘆き、祈り、踊りをテーマにした最新作『ACROSS THE UNIVERSE』と続きます。アルバムを重ねるにつれ取り上げられる楽曲も多彩さを増していますが、一貫しているのは静けさと深い響きの美しさ。今後の活動も楽しみにさせてくれるユニークなピアニストです。

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公式サイト:ピアノの風景
http://music.geocities.jp/domumachi7/index.html