World's End Girlfriend 『Hurtbreak Wonderland』

Hurtbreak Wonderland

Hurtbreak Wonderland

・・・例えば、捕まえた蝶の羽をむしりとってしまったり・・・しばし見とれていた絵を次の瞬間引き裂いたり・・・美しいものへの憧憬と破壊願望は背中合わせとなっていること、美しいものはそれが壊される時に最も輝くものであることを、World's End Girlfriendは一貫して訴えているように私には感じられます。物語性を喚起させられずにはいられない曲タイトル、ホーンやストリングスとエレクトロニクスが混ざり合うことによって丹念に構築された耽美的な音世界が、次の瞬間、何重にも重ねられたギターのノイズや、強烈な電子音によるビートによって蹂躙され、後には喪失感に満ちた廃墟が広がっている・・・そんな甘美な悪夢のような世界をWorld's End Girlfriendは提示し続けてきました。前作『The Lie Lay Land』はそんな世界観が頂点に達したかのような完成度の高い作品で圧倒されたものです。


新作も基本的な構造に変わりはありませんが、これまで以上に物語性を強く感じました。前半部分は特に叙情性が高く、挿入されるビートも不安感を煽りこそすれ、決して叙情性を消し去ることはありません。クライマックスは後半、9曲目「境界線上のススキ」で訪れます。ここにきてついに激烈なノイズとブレイク・ビーツが音世界を覆いつくし、それまで築き上げてきた音世界を粉々にしていきます。―そして、不意に訪れる沈黙。やがて終曲となる「水の線路」が過ぎ去りし思い出をいつくしむかのように静かに奏でられてアルバムは幕を閉じます。この80分の音絵巻は典雅で凶暴でセクシャルですらある危険な魅力を湛えて、聴く者を魅了せずにはいられません。