村岡実『Bamboo』

バンブー

バンブー

尺八でジャズ・・・というとまっさきに思い浮かぶのは私の場合、山本邦山。名盤の誉れ高い『銀界』や、山下洋輔富樫雅彦と共演した『ブレス』はかつて愛聴しました。特に後者は初めて富樫雅彦の演奏に接した一枚でもあり、思い入れもあるのですが、それはさておき今回の村岡実はそれらとは趣の異なる魅力があります。

1970年に発表されたこのアルバムの前半は村岡を中心として結成された和楽器中心のグループ“ニュー・ディメンション・グループ”による演奏。後半はドラム、オルガン等による編成のザ・ニュー・エモーションズによる演奏が収録されています。バカラック・ナンバー「サン・ホセへの道」やトニー・ハッチ「コール・ミー」などを取り上げたニュー・エモーションズ・サイドの演奏は10年以上前に聴いていたら、ラウンジものとして捉えていたかもしれません。しかし、聴き応えがあるのはやはり前半。冒頭の「テイク・ファイヴ」から和的にスイングする不思議な感覚のグルーヴを体験できます。アレンジを手がけた池田孝によるオリジナル「陰と陽」での和太鼓・ソロは海外のDJにも人気だとか。山本邦山のような緊迫感は無いものの、和洋を越えたポップさが感じられるユニークなアルバムといえるでしょう。