サリー・オールドフィールド『ウォーター・ベアラー』

ウォーター・ベアラー(水の精)

ウォーター・ベアラー(水の精)

マイク・オールドフィールドの姉、サリー・オールドフィールドの初期作品が紙ジャケで登場しました(Amazonの紙ジャケの画像がまだ登録されてなかったので、上には以前のCDを掲載しています)。彼女のアルバムは後になればなるほどフツーのポップスになっていくので最初期の2枚がベストだと思います。くつろいだ雰囲気の2nd『イージー』も愛すべきアルバムですが(コミカルなジャケットがいい!)、どれか1枚となるとやはり今回取り上げた1stとなるでしょう。


彼女のキャリアは1968年にマイクと結成したフォーク・デュオ“サリアンジー”から始まります。本人はあまり気に入っていないようですが、素朴なフォーク・アルバムで味のある作品。その後マイクは大ヒット作『チューブラー・ベルズ』で一躍時の人となり、更に『ハージェスト・リッジ』『オマドーン』、そして大作『呪文』と名作を残していきます。これらの作品にサリーはコーラスで参加しアルバムの美しさを一層高めることに貢献しました。しかしサリー本人はなかなか表舞台に立つことはなかったのですが、ようやく78年に発表したのがこの『ウォーター・ベアラー』なのです。


プロデュースを手がけたのは彼女自身。トールキンの名作ファンタジー指輪物語』が全体のライト・モティーフになっています。ミニマル・ミュージックの方法論にケルティッシュな感覚を残したメロディーを絡ませるという手法は初期マイク・オールドフィールドの得意技ですが、ここでの彼女もその手法を活用しています。ただし、大作・器楽志向のマイクに対してヴォーカルを中心とした小品にまとめているのがサリーならでは。12分に及ぶ大曲「ソングス・オブ・ザ・クウェンディ」も実際は小曲の連なりで成り立っています。サウンド面では鈴を中心としたきらびやかなパーカッションと、デイヴ・ローソン(グリーンスレイドのキーボーディスト)のシンセサイザーの貢献が大きい。一歩バランスを崩すと安易なニューエイジ風のサウンドに流れかねないところをギリギリのところで回避しているのですね。後年のエンヤにも通じる神秘的な世界観を感じさせながらもコンパクトなポップ・ミュージックとして成立している絶妙なバランスがこのアルバムを独自のものにしています。

You Tubeで見るサリー・オールドフィールド

「ミラーズ」

「ソングス・オブ・ザ・クウェンディ」の中のフレーズを取り出し、ポップ・ソングとしてまとめた曲。アルバム発売の2ヵ月後にシングルとしてリリースされました。今回の再発ではボーナス・トラックとして収録されています。