田部京子『プレイアデス舞曲集』
- アーティスト: 田部京子,吉松隆
- 出版社/メーカー: 日本コロムビア
- 発売日: 1996/05/21
- メディア: CD
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火・水とほとんど寝ていたのですが、ふと目が覚めて、さりとて立って活発に動けるわけでもなく、ぼーっとしていた時間に聴いていた音楽がいくつかあります。耳に優しい響きをもつピアノ音楽がほとんどで、モンポウの自作自演集、ラローチャのモーツァルト ピアノ・ソナタ全集、そしてこの『プレイアデス舞曲集』でした。
『プレイアデス舞曲集』は吉松隆による小品集でほとんどがピアノのために書かれています。
作品について吉松自身の言葉を引用すると、
「プレイアデス(Pleiades)」は、牡牛座の肩あたりに位置する7つほどの星からなる小さな星団で、和名は「すばる」。
この星たちの名に因んだ「プレイアデス舞曲集」は、虹の7つの色、いろいろな旋法の7つの音、様々に変化する7色のリズム、を素材にした「現代ピアノのための新しい形をした前奏曲集」への試み。
バッハのインヴェンションあたりを偏光プリズムを通して現代に投影した練習曲集でもあり、古代から未来に至る幻想四次空間の架空舞曲を採譜した楽曲集でもあり、点と線だけで出来た最小の舞踊組曲でもある。
とあり、小品ながらも旋律やリズムに工夫を凝らしたものであることがうかがえます。しかし、この田部京子による演奏でまず耳に残るのは、可憐でリリカルな叙情であることが特徴です。うつらうつらしながら耳を傾けていると滑らかな音の粒達の織り成す戯れが非常に心地よい(田部の繊細なタッチが生み出すピアノの音色の美しさも特筆すべきでしょう)。だけど聴き込む程に心地よさの裏に隠れていたリズムやハーモニーの試みが浮かび上がってくるのです。
この田部京子のアプローチは作曲者である吉松にとっても意表をついたものであったそうです。再び吉松の言葉を引用します。
田部さんが何曲か試しに録音したサンプルのテープを送って来てくれたんですが、それを聴いた出版社の担当氏が「ヨシマツさん、ぜんぜんイメージ違うんですけど、どうしましょうか?」って言う(笑)。
それまでこの〈プレイアデス舞曲集〉というのは、バッハやストラヴィンスキーのような、それにちょっとジャズの要素を加えたような、かなりメカニックな(実際コンピュータで作った部分もありますし)硬質のイメージを持ってたんです。それが、田部さんの演奏では、メカっぽさもジャズっぽさもまったくない。ものすごくビューティフルでスローでナチュラルな方向なんです。でも、それが尋常でない美しさなんですよ。それで「確かに全然違うけど、これでいい!」と返事して(笑)。
私としては「全然違うけど、これでいい!」とした吉松の太っ腹に感謝しなくてはならないでしょう(笑)。このアルバムが発売された後も吉松はこの曲集を書き続けていますが、それは田部に向けて作曲されたものになっています。それらをまとめたアルバムも発売されていますが、これも美しい仕上がりの好作品集ですよ。
- アーティスト: 田部京子,吉松隆
- 出版社/メーカー: 日本コロムビア
- 発売日: 2001/07/20
- メディア: CD
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日記も頻繁に更新されていますが、まずはたいへん面白い回想録「私は(たぶん)作曲家である」から読むことをお勧めします。