スティーヴ・ウインウッド『バック・イン・ザ・ハイ・ライフ』

バック・イン・ザ・ハイ・ライフ

バック・イン・ザ・ハイ・ライフ

やや売れ行きが不振だった前作から一転、大ヒットを記録し文字通りウインウッドを“ハイ・ライフ”に戻した記念碑的一作。ワンマン・レコーディングをやめて、チャカ・カーン、マイケル・ブルッカー、ジェームズ・テイラー、ナイル・ロジャーズなど多数の豪華ゲストを迎えて制作されたこのアルバム、本質的なところに変化はないものの、これまでの彼のアルバムにはなかった“華”があって、大ヒットしたのもむべなるかなといったところ。先行シングル「ハイヤー・ラヴ」をラジオで初めて聴いたとき「これは売れるんじゃないか?」と思って友人に聴かせまくった覚えがあります。ワンマン・レコーディング期と最も異なるのはボトムの力強さ。ダイナミックなビートが、ソウルフルでありながらどこか涼やかな彼のヴォーカルと鮮明なコントラストを為しているのがアルバムの大きな魅力といえるでしょう。さりげなく多彩なリズムを取り入れているのもさすがと思わせます。プロデュースを手がげたのはラス・タイトルマン。当時の流行の音とウインウッドの持ち味をバランスよく融合させた手腕は高く評価されるべきでしょう。後年の「ジャンクション・セブン」ではナラダ・マイケル・ウォルデンを迎えて同様なことを試みるけれど、これは私にはダメでしたね〜。やはり基本的には派手なことが似合わない人なんだろうなあ。そこが魅力でもあるわけですが、それだけに貴重な例外としての本作の価値は今後一層上がっていくと思います。