Charles Mingus『Let My Children Hear Music』

Let My Children Hear Music

Let My Children Hear Music

名盤『ミンガス・プレゼンツ・ミンガス』をはじめ、多くのアルバムで共演してきたエリック・ドルフィーが64年に他界して以降、ミンガスの音楽はやや精彩を欠くようになります。作曲を重視するミンガスのようなジャズ・ミュージシャンにとって、作曲者の意図を生かしつつも、そこから更なる世界を拡げる奔放な即興演奏を展開できたドルフィーは貴重な存在であったことは想像に難くありません。しかし72年のこのアルバムでミンガスの音楽は力強く復活しました。プロデュースはテオ・マセロ。「Don't Be Afraid,The Clown's Afraid too」冒頭のS.Eなどは彼のアイディアによるものでしょうか。大編成のビッグ・バンドによる黒光りするサウンドは、ミンガスがデューク・エリントンサウンドの最良の後継者であることをはっきりと示しています。フレンチ・ホルンやチェロも起用しているという点からみればギル・エヴァンスと共通するところも感じられます。しかし、音楽全体に漲る強い“意志”の力が感じられるのはミンガスならではといえるでしょう。長文のライナーからも彼の音楽に対する熱意がひしひしと伝わってくるのです。

Let My Children Have Music! Let Them Hear Live Music. Not Noise. My Children! You Do What You Want With Your Own! ―Charles Mingus