伊福部昭『協奏三題』

伊福部昭:協奏三題

伊福部昭:協奏三題

協奏曲形式の3作品を収録したアルバム。フォンテックから出ている伊福部昭作品集シリーズの中で最も聴き応えのあるアルバムです。
1曲目は「ピアノと管弦楽のためのリトミカ・オスティナータ」(1961)。最近はよく演奏会でも取り上げられる(私はまだ未体験。実演聴きたい!)人気曲です。伊福部がかつて中国に旅行した際、小さな仏像が四方の壁全面に嵌め込まれている堂を見て感銘を受けたことがきっかけで作曲された単一楽章形式の曲で、タイトル通り執拗に反復されるリズムが高揚感をもたらします。ストラヴィンスキー春の祭典」meets山下洋輔といった趣があるエネルギーに満ちた音楽です。
2曲目は「ヴァイオリンと管弦楽のための協奏風狂詩曲」(1948)。作曲者自身が述べているように、ヴァイオリンがジプシー・ヴァイオリン的な音色とメロディーを奏でることでアジア的な色彩感がもたらされています。途中で突然「ゴジラ」のテーマが出てくるのに驚かされますが、こちらの方が作曲年は先なんですね。
3曲目は「二十弦筝とオーケストラのための交響的エグログ」(1982)。80年代になってからの作品ですが、本質的な面は先の2曲と変わっていないところに伊福部の音楽の芯の太さを感じさせます。パワフルなオーケストラと二十弦筝の調和の妙は名著「管弦楽法」の著者の面目躍如といったところでしょうか。二十弦筝は1969年にこのアルバムでソロをとっている野坂恵子が開発したもの。野坂はそれだけでは飽き足らず、その後さらに二十五弦筝を開発します。その二十五弦筝を用いた伊福部作品については明日取り上げる予定です。