伊福部昭『伊福部昭の芸術4 宙〜SF交響ファンタジー』

宙-伊福部昭 SF交響ファンタジー

宙-伊福部昭 SF交響ファンタジー

昨年の2月8日、伊福部昭は91歳で亡くなりました。あれからまもなく1年。そこで今週は彼の曲をいくつか取り上げたいと思います。
彼の曲の中で最も人口に膾炙しているのはなんといっても『ゴジラ』を初めとする一連の東宝怪獣映画の音楽でしょう。20世紀の作曲家にとって映画音楽は重要な位置を占めており、伊福部の場合も例外ではありません。土俗的な力強さ、重厚に鳴り響く低音、呪術的なオスティナートといった伊福部の音楽の特質はここでも充分に発揮されているからです。
伊福部自身は映画音楽はあくまで映画のためのものと考えており、コンサートで上演することは考えていなかったのですが、熱心なファンの声におされて1983年、コンサート向けにいくつかの映画音楽をメドレー形式に編曲し、新たにオーケストレーションを施しました。それが「SF交響ファンタジー第1番」です。後にこのシリーズは3番まで続編がつくられました。また番外編的な位置づけとして、本盤に収録されている「倭太鼓とオーケストラのためのロンド・イン・ブーレスク」や「交響ファンタジー ゴジラキングギドラ」があります。
今回取り上げたアルバムには「SF交響ファンタジー」シリーズ3作と「倭太鼓と・・・」が収録されており、伊福部の音楽世界への入門として恰好の一枚となっています。冒頭でゴジラの動機が響きだしたとたんにアドレナリンが上昇しますね(笑)「SF交響ファンタジー第1番」はこの他にもいくつかのアルバムに収録されているのですが、本盤の演奏が迫力、録音ともとびぬけて優れています。価格的にはロシアのオーケストラを起用したナクソス盤が入手しやすいのですが、こちらを聴いた後ではえらくおとなしく感じてしまいますし、オケのアンサンブルも落ちます。ロシアということでちょっと期待していたので残念。ムラヴィンスキー/レニングラードフィルが伊福部作品を取り上げていたらなあ!