マイルス・デイヴィス『ウィ・ウォント・マイルス』

ウィ・ウォント・マイルス

ウィ・ウォント・マイルス

70年代中盤から半引退状態となっていたマイルス・デイヴィスが81年にカムバックした直後のライヴ・パフォーマンスを収録したアルバムです。
マイルスはとにかくライヴ・アルバムの名盤が多くて、代表的なのをざっと思いつくだけでも『フォア&モア』『イン・ベルリン』『ライヴ・エヴィル』『アット・フィルモア』『ダーク・メイガス』『アガルタ』『パンゲア』など枚挙に暇がないくらい。中でも70年代に連発した、カオティックなエネルギーが渦を巻く一連のアルバムはマイルスの到達点といってもいいでしょう。しかし、音数が少なくなりファンクの要素がくっきりと浮き彫りになったこの『ウィ・ウォント・マイルス』も決して過去の諸作にひけを取らない優れたアルバムです。カムバック以降のマイルスではこれが一番好きですね。
テオ・マセロの編集マジックによって冗長な部分がカットされたことによって、ファンの声を代弁しているタイトルの呼びかけに充分応えうる力強い演奏が収録されました(とはいえ、マイルスの演奏には往年に比べるとやや衰えを感じるところもあるのですが・・・)。共演者で素晴らしいのは、この頃はまだ若手だったマーカス・ミラー。彼のベースがもたらす太いうねりが、まだ体調が完全ではなかったマイルスの背中を力強く支えているように思えます。