Marissa Nadler『Ballads of Living and Dying』

Ballads of Living and Dying

Ballads of Living and Dying

今日も素晴らしい夢幻フォークのアルバムです。このジャケットとタイトルで傑作じゃなかったらどうかしている(笑)。70年代英国フォークみたいな雰囲気が濃厚に漂っていますが、実際はNYのシンガーソング・ライターが2005年に発表した作品。基本はアコギの弾き語りで、そこにときおり霞のごとくうっすらとエレキ・ギターやアコーディオンの調べがたなびいていきます。そしてMarissaの寂しげなヴォーカルがもうたまらないものがありますね。

最後の曲はエドガー・アラン・ポーの詩「annabelle lee」に曲をつけたもの。“長い年月が経ってしまったけれど、海辺の公国にアナベル・リーと呼ばれる一人の少女が住んでいた・・・(意訳)”と始まるこの詩はポーの夭折した妻、ヴァージニアのことを詠ったものといわれていて、ウラジーミル・ナボコフの名作『ロリータ』でも大きな役割を果たしています(「ロリータ」は元々「海辺の公国」という仮題でした。また、主人公H.ハンバートの初恋の相手がずばりアナベル・リーという名前で登場します)。最近若島正訳の「ロリータ」を読み終えたばかりの私にとってはうれしい1曲でした。