デヴィッド・バーン『UH-OH』

Uh-Oh

Uh-Oh

夢幻フォークを続けて取り上げてきたのですが、そろそろ明るいものが聴きたくなってきました(笑)。
ということで1992年に発表されたデヴィッド・バーンのソロです。個人的にはトーキング・ヘッズ時代も含めて最も愛聴したバーンのアルバムであります。当時はトーキング・ヘッズはほぼ活動停止状態でメンバーそれぞれの動向が気になっていた時期でした。それ以前からバーンはラテン・ミュージックに急速に傾斜していて、前作にあたる89年作品『レイ・モモ』ではサルサの女王と呼ばれるセリア・クルーズとデュエットを披露した曲も収録されていました。そうした経験を踏まえて発表されたこのアルバムにはラテンだけではなく、トーキング・ヘッズ時代からアプローチしていたアフリカン・ビートなどの要素がスムーズに融合されていて完成度が高いサウンドを聴くことができます。加えてジャケットに見られるようなとぼけたユーモア感覚も随所に発揮されていて、バーンが生き生きとこのアルバムのレコーディングに向っている様子が目に浮かんでくるよう。曲の途中からがらっと雰囲気が変わったりするような構成に凝っている曲も多いのですがその展開も巧みで鮮やか。
近年のバーンはヴェルディビゼーなども歌うようになっていて、『グロウン・バックワーズ』を聴いているとついに西洋音楽もそれ以外の音楽も自分の中でフラットに受け止め消化できる境地になったのだな〜、としみじみと感慨に耽るときがあります。今の彼にとってはこの『UH-OH』も習作として映っているかもしれませんが、このカラフルなサウンドとつきぬけた楽しさはバーンの代表作のひとつと呼ばれるにふさわしい輝きを今でも放っているように思えます。