ディック・ゴーハン『ハンドフル・オヴ・アース』

ハンドフル・オヴ・アース

ハンドフル・オヴ・アース

スコットランドのフォーク・シーンを代表する歌手、ディック・ゴーハンは昼は配管工として働き、夜はトラッドを歌うという生活を続けている人でまさにインダストリアル・フォーク(笑)を体現しているといえるでしょう。このアルバムは国内盤の解説によると、イギリスのフォーク雑誌「フォーク・ルーツ」による企画「過去10年間のブリティッシュ・フォークのベスト・アルバム」の1枚にも選ばれた傑作ですが、派手なところや、聴いている人に媚びたりしたところが一切ありません。マーティン・カーシーよりストイックで無骨な男の世界。ゴーハンのややクセのある声とギターに、時折フィドルなど簡単な伴奏が加わる程度のシンプルきわまりないサウンドなのですが、聴きこむ程に一見コワモテに思えるその奥に、なんともいえない滋味豊かな世界が広がっていることがじわじわと実感できるのです。初冬のぴんと張り詰めた空気の中で聴くのが良く似合う音楽。