山下洋輔『センチメンタル』

センチメンタル

センチメンタル

85年作。70年代山下洋輔トリオ解散後、NYトリオを結成するに至る過渡期の間に発表されたピアノ・ソロ・アルバムが本作。スタンダード・ナンバーに挑んだアルバムですが、現在でも良く取り上げるラヴェルボレロ」や「トロイメライ」「ユーモレスク」といったクラシックの有名曲も収録されています。
日本におけるフリー・ジャズの旗手として活躍してきた山下ですが、ただやみくもに自由に演奏するのではなく、70年代トリオの演奏のほとんどがきちんとしたテーマからスタートして最後もテーマに回帰して終わっているように、フリーである一方で楽曲の形式を重視する感覚が非常に強い人だと思います。だからこそ彼の音楽はジャズの枠を越えて多くの人に支持されてきたのではないでしょうか。
このアルバムにはそんな山下の特質が明瞭な形で刻まれており、彼の音楽への入り口としてもふさわしい一枚です。続くアルバム『ラプソディ・イン・ブルー』では全てがクラシックの楽曲で占められており、本作と併せて聴くとより楽しめることうけあいです。