近年の彼女は
ビョークに負けないくらい一作毎に大胆な試みを展開していて、かつて「
渋谷系のプリンセス」と称されていたのが信じられないくらいです。
カヒミ自身によるプロデュースの本作では作家陣に
大友良英、
ヤン富田、
ジム・オルークを起用。
コーネリアスやドゥーピーズが参加しているのがうれしい
ヤン富田曲と
ジム・オルーク曲はなんとかポップスの甘い香りをとどめていますが、中心となる大友曲は極端に音数を絞り込んだほとんど
ジョン・ケージと隣り合わせの世界。笙やハープ、
外山明による水を使った効果音、
Sachiko.Mのサインウェーヴといった特殊な音が使われているのですが、どれもごくひそやかに響いているので聴いていると鳴っている音より周囲の静寂が際立つようになっていきます
*1。それにしてもすごいところまで来たものですねえ。ほとんど現代音楽といってもいいくらいの大友曲ですが、辛うじて“ポップ・ミュージック”の内側に踏みとどまっているのは
カヒミのウィスパー・ヴォイスあればこそ。評価が分かれそうなアルバムですが私はこういう世界嫌いではないです。だけど『
デトロイト・メタル・シティ』の根岸くんはガッカリするだろうなあ(笑)。