9/21 山下洋輔&PANJAスイング・オーケストラat文京シビックホール

前立腺がんの早期発見、早期治療推進キャンペーンである「ブルークローバー・キャンペーン」の一環として行われた、山下洋輔率いるPANJAスイング・オーケストラのコンサートへ行ってきました。PANJAスイング・オーケストラは1984年に結成され、断続的にライヴを行ってきたビッグ・バンド。 山下洋輔のライヴは過去に2回見てますが、それぞれソロ、NYトリオという形態だったので、実にPANJAスイング・オーケストラとしては7年ぶりとなるという今回の公演、心待ちにしていました。なんといってもメンバーが豪華。杉本喜代志(g)、吉野弘志(b)、村上 ‘ポンタ'秀一(ds)、藤陵雅裕、梅津和時、片山広明、石兼武美(sax)、藤本忍、松島啓之、吉田哲治(tp)、中路英明(tb)という層々たる顔ぶれ。これに加えてゲストが日野皓正(tp)、坂田明(as)、渡辺香津美(g)。そしてスペシャルゲストに紅一点、大貫妙子!彼らが同じステージに立つというだけで素晴らしいですよね。

全体は2部に分かれ、第1部は山下、吉野、ポンタによるピアノ・トリオにゲストが加わる形式でした。2曲目で早くも渡辺香津美登場。曲は私が初めて聴いた香津美のアルバム『MOBO』に収録されていた「遠州燕返し」だったので個人的にはたまりませんでした。そしてそのまま香津美が残り、トランペットとトロンボーンが加わり大貫妙子が出てきました。初めて生でター坊の歌が聴けるというだけでわくわくしていたのですが、まずは香津美がボッサのリズムを刻んで「イパネマの娘」。続いてホーンが梅津和時ともう一人(名前失念。申し訳ありません)によるクラリネット2本となり、アルバム『Tchou(チャオ!)』の冒頭を飾った「美しい人よ」。しっとりとして良かったなあ。これを聴けただけで元が取れた気分でした。
今度は坂田、ヒノテルが揃って登場してモダン・ジャズの名曲「オレオ」。しょっぱなから70年代山下トリオを彷彿とさせる激しいソロで飛ばしまくる坂田が圧巻!対するヒノテルは、ソロの出だしがちょっと探っているというか、音を置きにいっているような感じでしたね。後半の盛り上げがさすがと思いましたが、坂田に圧倒されたような印象を受けてしまいました。それほどこの曲での坂田は良かったです。

15分の休憩を挟んで第2部はいよいよPANJAスイング・オーケストラ登場。幕が上がり、ポンタのドラミングに導かれ勢い良く演奏が始まりましたが、山下がいない・・・いぶかしんでいたら、客席へ通じる扉から坂田が現れました。続いて反対側の扉からヒノテル、そして渡辺香津美が登場。私の至近距離を弾きまくりながら通過していきました。スゲー!そしていよいよ御大、山下洋輔がピアニカを吹きまくりながら出てきました。そのまま客席の中で4人のソロ・バトルという展開に。そしてステージに上りそこでもひとしきり盛り上がる、派手なオープニングで一気に会場のテンションも上がっていったのです。
ここでステージの主旨である前立腺がんの早期発見について山下、坂田、香津美、ヒノテルによるトーク。坂田が「マー、コノー」と田中角栄のモノマネでオヤジ・トークを展開して笑いを独り占め。ヒノテルのどこかピントのずれた話もユーモラスでしたね。
その後は一旦ゲストは退場。「イン・ザ・ムード」などポピュラーな曲を素材に大エンターテイメントなビッグ・バンド・サウンドが堪能できました。サックス・セクションが遊撃部隊的な役割で、ソロでマイクを取り合ったり、おもちゃの笛やシャボン玉を吹いたり、紙吹雪やリボンを投げたりと大暴れ。金管組がきっちりと行儀良くソロを回していくのとは好対照でした。この辺りのメリハリのつけかたのうまさが“大人”って感じですね。メンバーは流石ツワモノ揃いだけあって、短いソロでもきっちりキャラが立っているのに感心しっぱなしでした。
そして後半になって再び大貫妙子登場。ゴージャスなサウンドをバックに「Shall We Dance」を歌い上げました。ラストはポンタのドラムが躍動する「シング・シング・シング」。坂田、香津美、ヒノテルも再度登場し、長いソロをたっぷりと聴かせてくれました。終盤では大貫妙子もまさかの登場。あまりの豪華さに眩暈がしちゃいましたよ。

全員が退場しても鳴り止まない拍手が続いた後、アンコール。幕が上がるとステージ奥のホリゾントにはまばゆいばかりの星空が映し出されていました。そしてピアノに座っている山下にスポットが当たり、ピアノの音が響きだしました。隣にはヒノテルただ一人。おもむろにトランペットを構えた彼から流れ出してきたのは「星に願いを」の調べでした。王道の演出ですが、華やかなビッグ・バンド・サウンドの後ではひときわ染み渡るものになっていたのは確かです。今日はヒノテル、ちょっと冴えないかな・・・なんて思っていた私のモヤモヤを吹き飛ばす朗々とした歌いっぷりでした。アンコールはこれ1曲で余韻を残したまま、再びメンバー全員が登場しお辞儀をして終了。あっという間の2時間、存分に楽しむことができました。