ハーパース・ビザール『シークレット・ライフ・オブ・ハーパース・ビザール』

シークレット・ライフ・オブ・ハーパース・ビザール

シークレット・ライフ・オブ・ハーパース・ビザール

究極の浮世離れアルバム。ヴァン・ダイク・パークスこそ参加していないものの、ペリー・ポトキン・Jr、ロン・エリオット、カービー・ジョンソン、ボブ・トンプソンそしてニック・デカロと、バーバンク・サウンドを築き上げた才人達が寄ってたかって創りあげたハリウッド・ドリーム。グループの面々は洗練されたサウンドに乗っかってやさしい声で歌っているだけ。自己主張というものは全く感じられません。だからこそ聴く方は曲の世界に抵抗なく入っていけるわけです。
このアルバムはおそらく2006年の今初めて聴いた人にも、ピチカート・ファイヴらによって再評価された90年代に聴いた人にも、68年にリアルタイムで聴いた人にもほとんど同じように響いてくるのでは?ひりひりするようなリアルさをここに求めてもせん無いこと。ヴァーチャルでカラフル、かつノスタルジックで甘美なサウンド・トリップをひたすら享受するしかありません。初めて聴いたときにはやはりロジャニコの「ドリフター」とバカラック「ミー・ジャパニーズ・ボーイ」に惹かれましたが、今は華やかなブラス・サウンドが楽しい「ファニー・ハウ・ラヴ・キャン・ビー」から「マッド」の流れが気に入っています。
それにしても制作当時、バーバンクの面々はどんな層をリスナーとして想定していたのでしょうか?一体どんな情熱がこんな音楽を作ることに彼らをかりたてたのでしょうか?彼らの音楽にうっとりとしつつも、いつも不思議に思ってしまうのです。