ロリス・チェクナヴァリオン指揮/アルメニア・フィルハーモニー管弦楽団『A.ハチャトゥリアン:交響曲第1番&第3番』

Symphony 1/3

Symphony 1/3

20世紀に活躍したアルメニアの作曲家、アラム・ハチャトゥリアン。作品では「剣の舞」がダントツに有名で、そのためしばしば「ミスター剣の舞」と呼ばれることもあり本人はおかんむりだったとか。実際は交響曲から映画音楽まで幅広いジャンルをてがけていた人であります。
この1枚を今回取り上げたのは、交響曲第3番が私にとって思い出の曲だから。高校時代ブラスバンドに所属していたのですが、2年生のときの定期演奏会でこの曲を演奏したんです。こんなどマイナーな曲が吹奏楽版に編曲されていること自体が驚きですが、曲を覚えるまでかなり悪戦苦闘した記憶があります。
原曲は“シンフォニー・ポエム”と題されていた単一楽章の作品です。10月革命30周年を記念して作曲された祝典的な性格が強い曲。通常の3管編成のオーケストラにオルガンと、そしてなんと15本のトランペットが加わるという変則的な楽器編成です。さて、これをブラバンでやるとなるとどうするか。15本のトランペットは乱暴に言ってしまえばファンファーレをでかい音でかますだけだから、金管組が唇のコンディションを整えて吹きまくればよろしい。問題はオルガン・パートで、冒頭部分のファンファーレの後、6連符(だったと思う。記憶で書いているので間違っているかも)の高速アルペジオが続く独奏となるのですね。ここのお鉢が私が所属していたサックス、フルート、クラリネットによる木管組にユーフォニウムを加えた面々にまわってきたんです。さあ、特訓の日々の始まりでした。2小節毎に他のパートと交代となるように編曲されていたとはいえ、指が回るようになるまでが一苦労。なんとか指がなじんできたところでパート毎のアンサンブル、木管全体のアンサンブルでフレーズの受け渡しがスムーズにいくようにしなくてはなりません。朝練・居残り練を繰り返してなんとか形になるところまで持っていったのでありました。
しかし、この曲の主役はあくまでファンファーレを高らかに奏でる金管組なんです。こちらが♪タラララララ・タラララララ・・・と一心不乱に吹いていてもその後ろででっかく♪パパァーン!とやられると、もうお客様には我々の音は聴こえません。曲の最後もド派手なしめくくられるのですが、脚光を浴びるのは金管。先生も演奏終了後、金管だけを立たせてお礼したのでありました。まあ、これはしょうがないのですが、木管組は打ち上げの席で先生に「苦労したのに僕たち、報われてませんよね〜」とわざと意地悪く詰め寄ったりしたものです(笑)。
とまあ、聴くたびに過ぎ去りし青春の一頁を思い出す曲なのですが、当時は入手できる音源がストコフスキー/シカゴ交響楽団のしか無かったので、先輩が録音してきたテープを皆で回し聴きしたものでした。このアルバムは90年代になって録音されたもの。しかもハチャトリアンの出身地であるアルメニア・フィルによるものなので貴重なものといえるでしょう。独特の垢抜けない響きがハチャトゥリアン特有の民族的な旋律にマッチしていて魅力的です。今ならこのアルバムを含む作品集9枚組が5000円程度で購入できてお買い得。ヴァイオリン協奏曲が抜けているのが惜しいのですが、「剣の舞」だけではない、ハチャトゥリアンの魅力を探るには恰好の選集といえるでしょう。