ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団『シンフォニック・ビーチ・ボーイズ』

シンフォニック・ビーチ・ボーイズ

シンフォニック・ビーチ・ボーイズ

オーケストラで奏でるビーチ・ボーイズ作品集といえば、以前ゲイリー・アッシャーによる『シンフォニック・ブライアン・ウィルソン』を取り上げたことがあります。これは『ペット・サウンズ』を愛するファンならぜひ手元に置いておきたい美しいアルバムでした。
一方こちらは夏・海・サーフィンといったビーチ・ボーイズのパブリック・イメージを膨らませた楽しいアルバムになっています。ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団はかつて『フックト・オン・クラシックス』を大ヒットさせたことでも知られるオーケストラ。加えてエグゼクティヴ・プロデューサーをブルース・ジョンストンが務め、マイク・ラヴやエイドリアン・ベイカーもゲストで参加するという強力な布陣です。「序曲」と23分以上に及ぶ「水の惑星組曲」では“シンフォニック”の名にふさわしいふくよかなオーケストラ・サウンドで往年の名曲がメドレーで次から次へと登場。壮大だけど大仰なアレンジではないので、安心して楽しめます。ちゃんとポップスのノリがあるんですよ。マイク・ラヴが歌う「ココモ」、ブルース・ジョンストンが歌う『ディズニー・ガール』も悪くない。一度はやってみたかったんだろうなあ、こういうこと。
他にはタミー・トレントがしっとりと歌う「神のみぞ知る」もなかなかだし、マイケル・トンプソンのギターが伸びやかにメロディーを歌い上げる「素敵じゃないか」も楽しい。しかしベスト・トラックは、オーケストラをあえて最初と最後にちょろっと用いるだけにとどめ、一人多重録音のアカペラ・コーラスで勝負したエイドリアン・ベーカーの「太陽あびて」です。これがOKなら山下達郎にも参加して欲しかったとつい思ってしまいますが(笑)。