ゴドレイ&クレーム『フリーズ・フレーム(紙ジャケット仕様)』

フリーズ・フレーム

10ccの“実験派”ケヴィン・ゴドレイとロル・クレームは、4作目『びっくり電話』を最後に10ccを離れてコンビとして活動開始。いきなり3枚組の超大作『ギズモ・ファンタジア』を発表してファンの度肝を抜きました。壮大なストーリーを持ったコンセプトに加え、サラ・ヴォーンをゲストに迎えるなどやりたい放題の作品です。さて、2人の脱退は彼等が開発したギター・アタッチメント“ギズモ”の可能性を追求するため、といわれており、『ギズモ・ファンタジア』はその成果ということになるのですが、このギズモというもの、新し物好きのムーンライダーズがいち早く輸入して試してみたのはいいけれど、モーターの音をギターのピックアップが拾ってしまい、ほとんど使い物にならなかったという逸話もあり、果たしてそんな可能性に満ちた装置だったのか、個人的にはとても疑わしく思っています。
そんなものを使ってあれだけのアルバムをつくったことがスゴイといえばスゴイのですが、以後の彼等はあまりギズモに頼らなくなり、より自由な音づくりを追求していきます。そして早くも3作目の本作『フリーズ・フレーム』という傑作を生み出してしまうのです。

PVも制作された「ニューヨークのイギリス人」(タイトルはスティングより早い)、今なら簡単でしょうが、当時の技術でどうやって録音したのか不思議な「アイ・ピティ・イナニメイト・オブジェクツ」のヴォーカルなど、ユニークなアイデアが次から次へと飛び出す近未来的サウンド。ゲストで参加したフィル・マンザネラのギターも効果的。ポール・マッカートニーも「ゲット・ウェル・スーン」にコーラスで参加してますが、これは扱いが地味(笑)。
2人組といえば同時期のスティーリー・ダンもそうなのですが、フェイゲン&ベッカーが豪華なスタジオ・ミュージシャンを起用して、彼等が思い描く理想のバンド・サウンドを追求していったのに対し、ゴドレイ&クレームはバンド・サウンドからも自由な発想でサウンドを組み立てていることが大きな違いでしょう。この2人のありかたはそういった意味でも先駆的なものだといえます。次作の、これも傑作『イズミズム』で大胆にラップへのアプローチを試みることができたのも、彼等の自由な発想とスタンスによるところが大きいでしょうね。そして、どの作品にも共通するのがヴォーカルの生生しさ。今度のリマスターでそのことが一層実感できました。