ルネッサンス『シェエラザード夜話』

シェラザード夜話(紙ジャケット仕様)

シェラザード夜話(紙ジャケット仕様)

1975年発表の4作目。グループが最も脂の乗っていた時期に発表された力作です。オーケストラを大々的に導入したクラシカルなサウンドがトレードマークですが、アニー・ハズラムの美声を初めとしてメンバーの演奏力がしっかりしているので決して大げさな印象を与えないのが彼等の最大の魅力です。

アルバムの中心はLPでいうところのB面全てを用いた大曲「シェエラザード夜話」。リムスキー・コルサコフの代表作「交響組曲シェエラザード」に影響を受けてつくられたことは明白ですが、本家に負けない充実ぶり。雄大なスケールに加えてちゃんとロック的な勢いもあるし、緩急自在な構成で最後まで緊張感を保ったまま、一編の映画のような世界が展開していくのです。

しかし、このアルバムの価値をより高めているのは前半の3曲目「オーシャン・ジプシー」の存在です。叙情的なメロディーとアニー・ハズラムの透明で憂いを含んだ歌唱が見事に調和した、ルネッサンス一世一代の名曲。アルバムトータルとしても傑作ということは承知しているのですが、ついついこの曲だけずっとリピートしてしまうことが良くあるんですよね。たとえルネッサンスが世の中にこの曲しか残さなかったとしてもロック史に残るバンドになっていたのでは・・・と思わせるくらいの魅力を持った、正に畢生の傑作とよぶに相応しい一曲だと思います。