シャーリー・コリンズ&デイヴィ・グレアム『フォーク・ルーツ、ニュー・ルーツ』

フォーク・ルーツ、ニュー・ルーツ

フォーク・ルーツ、ニュー・ルーツ

かたやシャーリー・コリンズといえば、元フォアポート・コンヴェンションのアシュリー・ハッチングスが結成したアルビオン・バンドへの参加や、妹であるドリー・コリンズとの共演作などで数多くの名唱を残した、ブリティッシュ・フォークを代表するヴォーカリスト。こなたデイヴィ・グレアムといえば、ブルースやインド音楽を取り入れた独自の奏法でバート・ヤンシュやジミー・ペイジなどに多大な影響を与えた、これまたブリティッシュ・フォークを代表するギタリスト。この2人が唯一デュオ名義で発表したアルバムがこれです。


1964年に発表。デイヴィのギターとシャーリーのヴォーカルだけという極めてシンプルなサウンドながら、今聴いても全然古びたところが無いことに驚かされます。トラッドを歌うシャーリーの気品ある歌声はそれだけでも充分に古典的価値を作品に与えていますが、それに対するデイヴィのギターのなんと冴え渡っていることか。時にブルージーに歌にからみつき、時には軽快にスイングするなど変幻自在の演奏が素晴らしい。トラッドが続く中にソロでセロニアス・モンク「ブルー・モンク」やインド音楽っぽい自作曲「リフ・マウンテン」を演奏したりしているのですが、それが自然にアルバムの中に溶け込んでいるのが凄い。ペンタングルのジョン・レンボーンとバート・ヤンシュの役割をひとりでこなしているようなものです。“英国フォーク史上最重要の作品”と呼ぶ人がいるのもむべなるかな。これこそ真のプログレッシヴ・ミュージックと呼ぶにふさわしい名作ですね。