スタン・ゲッツ『ヴォイセズ』

ヴォイセズ(紙)

ヴォイセズ(紙)

スタン・ゲッツがヴァーヴに残した67年作。プロデューサーがクリード・テイラーということもあって、ほとんどCTIレーベルの諸作と変わらない、涼しげで心地よい一枚となっています。ハービー・ハンコックハンク・ジョーンズジム・ホールロン・カーター、グラディ・ナイトといった魅力的な参加メンバーに加えて、アレンジがクラウス・オガーマンという鉄壁の布陣。ときにボッサ・テイストも交えたしなやかなバッキングに支えられて、ゲッツがメロディアスなソロを悠然と吹きまくっています。そして今作の大きな特徴はクラウス・オガーマンのアレンジ。得意のストリングスを封印しコーラスを起用しているのです。決してドラマティックに盛り上げるためではなく、要所要所で楽器の隙間から浮かび上がってくるように響かせて、サウンドに清涼感と奥行きを与えているコーラス・アレンジはさすが匠の仕事っぷり。ただしハミングに終始して、スキャットは一切ないのでご用心。あくまでコーラスは裏方ですからね。ゲッツの柔らかな音色とソロを楽しむべきアルバムです。個人的なお気に入りは9曲目の「ミッドナイト・サンバ」。