アルトゥール・ルービンシュタイン『クラシック・アプレミディ・プール・ジュルネ』『クラシック・アプレミディ・プール・ソワレ』


サバービア・スイートやフリー・ソウル、カフェ・アプレミディ等でおなじみ、橋本徹による初のクラシック・コンピレーションがリリースされました。第1弾はルービンシュタインのコンピレーションで、<昼編>「プール・ジュルネ」と<夜編>「プール・ソワレ」の2枚同時発売です。


選曲の意図などについては橋本自身がhttp://www.usen-cs.com/column/cafe/(vol.30 午後のクラシックとラスト・ソウル・マン)で詳細に語っているので、こちらが付け加えることはほとんど無いのですが、構成や一貫したトーン、聴き心地の良さはさすがに巧みで、従来のカフェ・アプレミディ・シリーズを愛聴してきた方にも自然に受け止められる内容となっています。ジャケットも美しいし、息子であるジョン・ルービンシュタインによるエッセイもいい文章です。ポップ・ミュージックのファンとしては、インタビューでも語られていますが、クラシックだからと構えることが無く、ジョビンやバカラック、そしてビル・エヴァンスなどと同じ視線でこのコンピレーションが編まれていることがよく分かるのがうれしいところ。ルービンシュタインのまろやかで、かつ華のある音色、自然なメロディーの歌わせ方はまさにこのシリーズの第1弾にふさわしいものといえるでしょう。個人的に最近あまり聴き込んでいなかったこの巨匠の魅力を再発見させてくれたアルバムでした。なんというか、いい意味での鷹揚さがありますね。スケールの大きさ、と書いた方が良いでしょうか。このアルバムの後にミケランジェリを聴いてみたら「何と神経質なピアノなんだ!」と思ってしまいました。もちろんミケランジェリも偉大なピアニストであることは言うまでもなく、彼のドビュッシーは大好きな演奏なのですが。


続編としてはギーゼキング、ロジェ、グールド辺りが予定されているようです。ギーゼキングとはまた渋い人を選んできたものだと思いましたが、山尾敦史さんのドメインパーキングを読んで納得しました。きっと山尾さんの考えていらっしゃる通りではないでしょうか。今後のリリースが楽しみです。契約会社との問題もあるでしょうが、アリシア・デ・ラローチャやフリードリヒ・グルダでもつくってくれないかなあ。ピアニスト以外ならセコビアやバルエコといったクラシック・ギタリストのコンピレーションもぜひ橋本徹の選曲で聴いてみたいと思いました。