セニョール・ココナッツ『プレイズ・YMO』

プレイズYMO(初回限定生産)

プレイズYMO(初回限定生産)

セニョール・ココナッツとはアトム・ハートの別名義・・・といっても、もはやこちらの方が有名かもしれません。これまでにもクラフトワークやディープ・パープルなどをエレクトロ・ラテンで解釈したカヴァー・アルバムを発表して話題になっていますから。今回の新作は満を持してのYMOのラテン・カヴァーです。


アトム・ハートといえばかつて細野晴臣とテツ・イノウエと共にHATというユニットを結成した経歴もある人。なのでYMOの音楽性については熟知しているだろう。そしてYMOといえばもともとエキゾティックなテイストを持っているので、きっとラテンとの相性もいいだろうと聴く前から予想はつきました。逆につくる側から見れば、同じテクノ・ポップのユニットといえど、クラフトワークの時のような意外性による衝撃は見込めないわけで、かなり苦労したのではと思われます。果たしてこのアルバムはあちこちに工夫を凝らして、うるさ型のファンの期待にも応えるような配慮がなされています。


まずはゲストにYMOのメンバー3人が参加していること*1。しかも日本盤はマスタリングに小池光夫を起用するという念の入れよう。これだけでも買って損はしないと思う人もいると思います。次にインタールードを多用して変化をもたらしていること。テイ・トウワやマウス・オン・マースを起用していることも見逃せません。そして最後に選曲。「ファイヤークラッカー」や「シムーン」といったエキゾ色濃い曲や「東風」「ライディーン」のような定番曲はもちろん収録されていますが、「音楽の計画」や「ジャム」「音楽」といった中〜後期の曲も積極的に取り上げていて、このアルバムを他のYMOカヴァー・アルバムと一線を画すものにしています。特に「音楽の計画」が白眉。また、「音楽」でヴォーカルに日本語を歌わせていることもポイント高いです。


全体として、やはりクラフトワークの時のようなインパクトはありませんでしたが、文句なしに楽しいアルバムです。YMOのカヴァーはこれまであまり気に入ったのがなかったので、ここまでやってくれれば充分満足、満足。これでライヴを生演奏でやってくれたらもっと面白くなりそうな気がするのですが、どうでしょうか?

*1:坂本龍一が「東風」、高橋幸宏が「LIMBO」、細野晴臣が「The Madman」