ススム・ヨコタ「Wonder Waltz」

さて、ワルツ部門からはこれ。“奇才”という言葉はこういう人のためにある、と言いたくなるススム・ヨコタの新作です。全曲3拍子のエレクトロニカ。これだけでも「ようやるわ」ですが、今作はほとんどの曲でヴォーカルを起用しているのが新機軸。そのラインアップがまたびっくり。元ロスコのキャロライン・ロスやカヒミ・カリィは、ふむふむなるほどと冷静に納得できましたが、イヴァ・ビトヴァの名前が出てきたのには驚きました。チェコ出身で、ヴォーカルとヴァイオリンを駆使するアヴァン・ポップ界のユニークなパフォーマーです。今作でもヴォーカルだけではなく、ヴァイオリンでも参加。やはり彼女の参加したトラックは強烈な印象を残します。


「ためらいのタンゴ」ではまだほぼ全ての曲に“タンゴの記憶”と呼びたいものが宿っていましたが、こちらは実際のところ“ワルツ”からは遥かに遠い。たまにかすかな痕跡がうかがえますが・・・。ダビーでエレクトロニカな音響の中ハウス、レゲエ寄りの、時にはエスニックなビートが本来の拍ではなく3拍子に編集されているので、一筋縄ではいかない、ジャンル不明の脱臼的音楽になっています。しかし全体的に不思議な優雅さを感じるんですよね。前作「Symbol」同様、中毒性を持ったアルバムになっています。